とんこつのブログ

スーパードンキーコングシリーズのRTAプレイヤーであるとんこつの活動記です。

ニコ生でのRTA配信をやめました

 きっかけは、たった1つの匿名コメントでした。

 先日、1年半続けてきたニコニコ生放送 (ニコ生) でのRTA配信をやめることに決めました。*1

 その理由について、私の数少ない視聴者であった方々に向けてこの記事にまとめます。

 

 RTAとはReal Time Attackの略であり、ゲームを実時間でどれだけ早くクリアできるのかを競う遊び方です。私の場合は特に、スーパードンキーコングシリーズのRTAに興味があり、1秒でもタイムを縮めることを目指して活動しています。

 この間、いつものようにニコ生でスーパードンキーコング2RTAを配信していたところ、次のような匿名コメントがありました:

突然失礼します。先ほど6-1の水中と、アニマルランドのスコークスを録画検証させて頂きましたが、連射コン使ってますよね?

(ニコニコ生放送 lv322630980, コメント番号36)

 内容は、私のプレイに関する不正を疑うものです。

 私は断じて、RTA活動において不正を犯したことはありません。

 しかし、RTA走者としての「信用」を守るために、このたった一言でニコ生からtwitchへとメインの活動場所を移すことを決意しました。

 

 この決断に至った理由について、この記事では以下の3つの観点から説明します:

1. RTAにおける「信用」の重要性

2. ニコ生を続けた場合のリスク

3. 配信場所を変えるメリット

 

 本題に入る前にまず、先に引用した匿名コメントに対する反論を2点述べます。

根拠のない不自然な指摘

 連射コンというのは、ボタンを押しっぱなしにするだけで高速連打できる機能のついたコントローラーのことです。連打が早いほど有利な場面では人力を上回るパフォーマンスを発揮できますが、スーパードンキーコングシリーズのRTAではルール上明確に禁止されています。*2

 私が連射コン疑惑をかけられたポイントの1つ「6-1の水中」についてですが、ここはそもそも、連打すると却って遅くなってしまう場所です。*3

 的外れな内容に違和感を覚えつつも、私はすぐにコメント主に証拠の提示を求めました。もし本当に録画検証した結果として不正を疑っているのなら、どう検証したのかを言えるはずです。しかし、次のコメントが返ってくることはありませんでした。

 

不適切な時と場所での指摘

 当該コメントは、私が自己ベストを狙っていた配信中のものでした。私は根拠を示すよう求めるという対応をしましたが、本来は、この手のコメントにはまともに取り合う必要すらありません。

 その理由は至ってシンプルで、コメントの時と場所が不適切だからです。

 もし誰かの不正を証明したいのであれば、まずは客観的な証拠を揃えてモデレーター*4などの第三者に提示するのが筋というものです。たとえ本当に不正が行われていたとしても、疑惑の段階でそれを配信中にコメントするのは、配信者に対して極めて失礼な行為にあたるはずです。

 

 さて、ここまでの経緯と私の反論を読んで、こう思う方も少なくないでしょう:

「単なる184 (匿名) の嫌がらせコメントでしょ?」

「大げさに反応しすぎなんじゃないの?」

 ここからは、なぜ私がニコ生をやめるという大げさなリアクションを取らざるを得なかったのかについて説明します。

 

 コメント主の真意はもはや闇の中です。しかし、件のコメントが嫌がらせである可能性が高いことは既に説明したつもりですし、仮に今からでも不正の根拠を提示されれば、責任を持って反証します。これを前提に、以下では「件のコメントが嫌がらせである」と仮定して話を進めます。

 

ニコ生の性質と184コメント

 ニコ生は、RTAのコミュニティでは未だに最大手配信サイトの1つです。そして、その盛り上がりを支える大きな要因は、184コメント機能であると認識しています。

 184コメント機能とは、ユーザーIDを暗号化して匿名でコメントを投稿できる機能です。生放送においては、暗号化されたIDは毎週木曜日にリセットされます。この機能こそが、BANされることを恐れず誰でも何でもコメントできるという、ニコ生特有のカジュアルな雰囲気を生み出しています。

 184機能のもたらす気軽さは、ともすれば視聴者側にゲームごとの深い知識を要求しがちなRTA配信において、多くのメリットを生みます。私自身も、初心者だったころベテランRTA走者の配信によくお邪魔し、184コメントでの不躾な質問に色々と答えてもらったものでした。

 その反面、 184コメント機能の性質上、ニコ生ではいわゆる「荒らし」行為が他の配信サイトと比べて少なくありません。荒らしコメントにどう対応するかは配信者によって分かれるところです。私の場合は通常であれば、荒らしと分かるコメントに反応しないよう心がけていますし、そもそも気にも留めません。

 しかし今回のコメントは、ニコ生配信者である以前にRTA走者である私にとっては、重く受け止めざるを得ないものでした。嫌がらせの可能性が高いと分かっていてそれに屈するような形になったのは、私のプレイに対する周りからの「信用」を守るためでした。

 

1. RTAにおける「信用」の重要性

 私がRTAという趣味に没頭している最大の理由は、スーパードンキーコングシリーズを好きで、その好きなゲームを少しでも上手くプレイすることに喜びを感じるからです。RTAの楽しみ方は人それぞれですが、私の場合は自分の成長そのものが目的であり、基本的にはそこに他人との関わりは含まれません。

 一方で、特にRTAとしての歴史が長いゲームをプレイするうえでは、他人と関わることで、独りでプレイする以上に楽しみ方が広がる側面もあります。多くの先人達が開拓・最適化してきたルートを自分で習得・洗練したり、同じゲームの走者と切磋琢磨して良い記録を目指したり、大会やイベントに参加して交流の輪を広げたり。私自身も、これらの楽しみ方から得たモチベーションが、少なからず活動の原動力となっています。

 しかしながら、RTAという趣味において、他人と関わろうとした瞬間に無視できなくなるのが「不正と信用」の問題です。現在、世界中のRTA走者と競争する手段として、たとえば speedrun.com のような記録集サイトに動画を提出するのが一般的となっています。そこには投稿された記録を審査するモデレーターがゲーム毎にいて、定められたルールの中で1秒でも速いタイムを競う争いが繰り広げられています。

 では、そこに載っている記録は100%正当なものかというと、残念ながらその保証はありません。RTAにおける不正の手段は様々です。裏で切り貼りした動画を垂れ流して自分のプレイのように見せかける、認められていないツールを使用してタイムを短縮するといった行為がその代表例です。これらは世界記録という名誉のためであったり、記録に対する賞金のために行われることがあります。詳細は述べませんが、私がRTAを始めてからの1年半でも、複数の実例を目の当たりにしてきました。不正の可能性を100%排除することは、オンラインでのプレイが主流であるRTAの性質上、根本的に不可能です。

  そこで一走者として私が大切にしているのが、プレイヤーとしての「信用」です。例えば、とあるプレイを切り取って、その場面で不正していないことを後から証明することは極めて困難ですが、「不正をしない人間である」という周りからの信頼を長期的に築いていくことなら出来ます。具体的には、オフラインイベントでプレイする、(常時ではありませんが) 手元カメラや入力表示を導入する、練習から記録を狙うまで全ての過程を生配信で世界中に公開する、といった行動を通じて、あらぬ疑いが自分に向けられる余地を減らす努力をしてきました。

 そろそろ本題に戻りますが、私にとって件のコメントは、ゆっくりと積み上げてきたこの信用を脅かしかねない、恐ろしいものでした。

2. ニコ生を続けた場合のリスク

 何の前触れもなく突然不正を疑われたあの瞬間、ある真理を突きつけられた気がしてハッとしました。それは「信用を得るには多大なコストがかかるが、それを崩すのは簡単である」という当たり前の事実です。

 RTA走者としての私をよく知っている人から見れば、根拠のないコメント1つで私に対する信用は揺るがないでしょう。少なくともそう思ってもらえるだけの努力はしてきたつもりです。しかし、たまたまその時私の放送を初めて訪れた視聴者の目にはどう見えるでしょうか。仮に私がその場でコメントを無言でBANしていたら、「真っ当なコメントを自分に不都合だからといって削除する疑わしいプレイヤー」と思われても仕方ありません。たった1つのコメントへの対応を誤ると、いとも簡単に自分の信用に傷がつくかもしれないという事実に直面したとき、ニコ生でRTA配信を続けていくことが急に怖くなりました。

 さらに私の精神的負担を大きくしたのは、国内では最大級の某RTAイベントへの参加が決まっていたことでした。今回の出来事は、1年以上前からそのイベントを目指してきて、やっと走者としての出場が決まった矢先に起こりました。根も葉もない匿名コメントも、万一変な噂が広まって同じようなことを言われ続ければ、今後お世話になるイベント関係者に迷惑をかけることになるかもしれません。それは私にとって、どんなコストを払っても避けるべき最悪のシナリオでした。

 少し脱線しますが、今回の経験から、そもそも私はニコ生での配信に向いていなかったことに気づかされました。私のRTA配信の一番の目的は、生配信することで記録の正当性の一端を示すことです。しかし、その場所として最初にニコ生を選んだのは、少なからず活気のあるコメントを求めてのことでした。どんな理由であれ、1つの匿名コメントに多大なショックを受けるような人間が、 匿名コメントに溢れる場所での配信に向いているはずがありません。私の神経質さが意図せずに、気軽にコメントしにくい雰囲気を醸し出してしまったこともあったでしょう。匿名性のメリットだけを享受してデメリットから目を背けてきた私の態度は、今振り返ると場違いだったように思います。

3. 配信場所を変えるメリット

 今後のメインの活動場所は、twitchに移行します。twitchは国内のRTAコミュニティでも、ニコ生と並ぶ大手サイトとして広く利用されており、私自身も年始からニコ生との同時配信先として活用してきました。

 配信場所を変える最大のメリットは、悪意ある匿名コメントを排除できることです。twitchのチャットではニコ生のコメントと違ってログインが必須であり、ユーザーIDを隠してチャットすることもできません。もちろん今回と同じようなコメントが来る可能性をゼロにはできませんが、その可能性が大きく減ることは私にとって非常に快適です。

 また、仮にそのようなコメントが今後来たとしても、2度目は同じダメージを受けることはありません。今回の出来事を引き合いに出して相手の非を説明すればそれで十分なので、必要以上の対応は取らないでしょう。慣れ親しんだニコ生を離れ、こうして長々とブログを綴るというコストを払っているのは、将来ふりかかるかもしれない厄介事から、自分の信用とモチベーションを守るためでもあります。

おわりに

 匿名コメントの悪い側面ばかり強調した記事になってしまいましたが、ほとんどの184コメントの裏には、良識ある視聴者の方々がいたことを決して忘れません。 私は自分のために趣味の範囲でRTAを楽しんでいるので、自分にとっての快適さだけを求めて今回の決断をしました。その決断について、ニコ生で私と関わってくださった方々に向けて、この記事をもって最低限の説明責任を果たしたつもりです。

 ここまで読んで私の考えを理解したり、今後も他の場所で私のプレイに対して応援を送ったりしてくださる方々には感謝しかありません。もちろん、最後まで私の考えに共感できなかった方もいるでしょう。その場合は「RTAにおける不正についてこんなに重く考える人間も世の中にはいるんだな」ということだけ心に留めていただければ幸いです。

*1:今後イベント等の際にニコ生での配信が必要になれば、迷惑にならない範囲で一時的に復帰することはあるかもしれません。

*2:View Rules参照:Donkey Kong Country 2: Diddy's Kong Quest - speedrun.com

*3:6-1の水中では、アニマルフレンドのエンガードに乗って、突きを絶え間なく出しながらノンストップで進みます。そのため非プレイヤーから見ると連打と思われるかもしれませんが、実際には連打だと敵に被弾してしまうので、タイミングの微調整が必要です。

*4:スーパードンキーコングシリーズでは国内外にそれぞれRTAのコミュニティがあり、モデレーターと呼ばれる役職を持つ走者が、記録を承認したりルールを整備したりする権限を持っています。